みちびき(準天頂衛星システム) 対応機器

10月10日に種子島宇宙センター から「みちびき4号機」を搭載したH-IIAロケット36号機が打ち上げられ、無事安定軌道に乗りました。みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)は「日本版GPS」とも言える測位衛星網で、JAXAが主体となって構築を進めています。各メディアなどでは盛んに「誤差が数センチになる」と報道しています。

また各メーカでも「みちびき対応」を謳った製品を発売し、内閣府宇宙開発戦略推進事務局のサイト(以下、みちびきのサイト)に掲載されています。スマートフォンでもiPhone 7 / 7 Plus、Galaxy S8 SC-02J、AQUOS R SH-03J等が対応していると記載されています。この二つを鑑みると、みちびきの測位網が完成すれば、現有のiPhone7などでも測位誤差が数センチになるように思えます。

しかし実際のところは、そういう訳にはいかないというのはあまり知られていないかもしれません。みちびきのサイトを見ると、みちびきから送出される電波の周波数帯とその用途が記載されています。(->みちびきのサイトから転載)

マスコミのいうように「誤差が数センチ」となるためには黄色く塗りつぶした“L6”と言う周波数帯をサポートする必要があります。L6をサポートしていない場合は、従来通り測位誤差は数メートルとなります。


みちびきの対応機器リストから転載)
 
 
一方でみちびきのサイトに記載されている、対応製品の対応信号を見るとコンシューマが使用するような携帯電話、デジタルカメラ、カーナビなどはすべてL1C/Aのみのサポートとなっています。L6をサポートしているのはアンテナやLSIなどの、個人には縁のないもののみとなっています。

よく「iPhone7では、みちびきに対応している」と言うサイトの記述を見かけますが、みちびきの電波を受信できるので嘘ではありませんが、それが数センチの誤差で測位可能と言うわけではないのです。とは言えL6をサポートしていなくとも、みちびきとアメリカのGPSを併用する事によりこれまで以上に、誤差の発生を抑えることは期待できます。L1C/Aのサポートのみでもその意義は充分にあります。

ただせっかく日本が独自に構築している、みちびきの測位網ですので個人もそのメリットを享受できるようになって欲しいものです。

4 responses on みちびき(準天頂衛星システム) 対応機器

  1. あさと より:

    何はともあれH2ロケットの成功持続は喜ばしいですが
    今回はこういう衛星を打ち上げたんですね
    専門的な知識がない人間が浅はかに考えることは
    「日本版GPS」などと言われると
    一瞬「ほお~!」と感心した後
    またガラパゴス化するんだろうか・・・と言う点です

    1. ま~く より:

      あさとさん

      今回のH2Aの打ち上げで30回連続での成功となり、ロケットとしての信頼性も随分と増してきたようです。年度内にはあと一回打ち上げが予定されており、気候変動観測衛星などが宇宙に運ばれる予定です。

      みちびきは「日本版GPS」という言われ方をしますが、みちびき単独で測位をするのではなくアメリカのGPS、ロシアのGLONASSなどと補完し合って測位を行う事になります。多数の衛星を使う事により測位精度の向上が見込まれるようです

  2. いはち より:

    すみません。この関係に疎くて・・
    GPSとはまた違うのでしょうね。

    1. ま~く より:

      いはちさん

      GPSと言う言葉の浸透度が高く一般名詞のように使われていますが、実はGPSと言う言葉は固有名詞でアメリカの衛星測位システムの事を差します。衛星測位システムは各国で開発がすすめられロシアのものが「GLONASS」、中国のものが「北斗」と言う名称です。

      日本ではこれまで自前の衛星測位システムを持たず、アメリカやロシアのものを使用させてもらっていましたが、どうしても所有国の都合で運用されるので時間帯によっては日本上空に衛星が充分にいないという状況もあったのです。またGPSは元々は米軍の軍用システムであったこともあり米国政府によって利用に制限をかけられるという事も過去にはありました。そこで「みちびき」と言う自前の衛星測位システムを構築することでそのような不都合を排除し、測位精度も上げようというのがみちびきプロジェクトの目的です。予定であれば来年4月には、みちびき4機体制によるサービスが提供されるので測位精度の向上が期待できます。

      ただし今後はみちびきだけを使用するのではなく、従来利用してきたGPSやGLONASSも相互補完の関係にありますので、今後も利用されることになります。


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