バンコク都市交通網(2018年3月現在)

これまで何度かバンコクの都市交通であるBTS(スカイトレイン)、MRT(バンコクメトロ)、ARL(エアポートレイルリンク)について取り上げていますが、今回はその最新情報をアップデートしたいと思います。

2017年の動き

昨年(2017年)はBTS/MRTに関しては大きな動きはなかったように見えます。主なトピックスを挙げると以下のようなものがあります。

 2017年3月:BTSスクンビット線のサムローン駅開業
 2017年8月:にMRTブルーラインのタオプーン駅開業

ともに既存の路線から1駅分だけ延伸した形です。あまり大きな動きがなかったようにも見えますが、実は大きな意味がある延伸となっています。

サムローン駅開業の意義

昨年3月に開業したBTSスクンビット線のサムローン駅はバンコクの隣県サムットプラカーン県サムットプラカーン市にあります。駅の周辺は住宅街となっています。2018年中にはさらに8駅が開業し、ケーハーまで南進する予定となっています。


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サムローン駅の開業は実は大きな意味を持っています。2020年にモノレール方式で開業する予定のイエローラインが完成した際には、サムローン駅で接続することになっています

MRTの分断が解消

2016年にパープルラインが開業した時は、既存のBTS/MRTと接続しておらず最寄のMRTブルーラインのバーンスー駅から1kmほど離れていました。この区間は連絡バスが運行していましたが、乗継が不便でパープルラインの客足が伸びない原因にもなっていました。

8月のMRTブルーラインがタオブーンまで延伸したことで、ようやくMRTパープルラインへ直接乗換えができるようになりました。なおMRTブルーラインは今後も、タオブーン駅-タープラ駅間(2020年3月開業予定)、フアランポーン駅-ラックソン駅間(2019年9月開業予定)と延伸する予定になっています。


 
これらの区間が開業すれば、ブルーラインは環状線となる見込みです。

課題山積のバンコク都市交通

新規区間の建設が進むバンコクの都市交通ですが、開通済のものについても多くの課題を抱えています。その典型がARLです。ARLは9編成の列車を保有していますが、複数の車両がオーバーホールに入っています。そのため稼働できているのは5、6編成のみとなっており、充分な輸送量を確保できていません。

朝夕のラッシュ時間帯には乗客が駅の外まで溢れるありさまで、利用者の不評を買っています。ARLを運営するSRTエレクトリファイドトレインは年末までに9編成での運行が可能になるとしていますが、しばらくは混雑が続きそうです。またBTSも輸送可能許容量を超えた状態が続いており、混雑が慢性化しています。

相変わらず予定通りに進まないメーンムムカード

本ブログでも何回か取り上げていますが、BTS、MRT、ARLの共通ICカードとしてMangmoom(メーンムム)カードの導入が計画されています。当初の計画では2016年8月から発売開始としてロゴマークも発表していましたが、その後に1年遅れて2017年8月に導入と変更していました。修正後の計画であれば、2018年になった現在は運用されているはずですが、実情はと言うとまだ運用されていません。

こんな実情に対しトゥームピッタヤパイシット運輸大臣は2017年10月の記者会見で、2018年6月までに運用を開始すると述べています。しかし現地の報道によれば、カードの読取り機に問題があり製造メーカに損害賠償を求めるという話にまでなっているようですので、まだ一波乱あるかもしれません。ただ実現すれば、BTS/MRT/ARLはもとよりバスやチャオプラヤー川の船まで一枚のカードで利用できいるので便利になることは間違いないと思われます。

個人的に期待のレッドライン

タイ国内線を利用する機会がある小生としては、スワンナプーム国際空港だけでなくドンムアン国際空港を利用する可能性も高いです。しかしそこで問題となるのは空港へのアクセスです。バンコク都内でタクシー運転手にドンムアン国際空港に行きたいと言うと、渋滞がひどいから嫌だと言って、8割以上の確立で乗車拒否にあいますし、国鉄は大幅遅延が日常化し飛行機に乗る際にはリスクが高すぎます。

そんなドンムアン国際空港へのアクセス向上に大きく寄与するのではと、小生が注目していたMRTレッドラインです。こちらも2020年開業を目指して日本企業も多くが参画するJVによるプロジェクトが進んでいます。


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計画ではバーンスー駅からドンムアン駅を国鉄の既存線路沿いに高架鉄道として、ドンムアン駅以北は地上鉄道として建設される予定です。現在もドンムアン国際空港に隣接して国鉄ドンムアン駅がありますが、鉄道利用者を全く想定していないとしか言いようのない状態です。

空港から駅に向かうには、こんな隠し扉のような出口を出ないといけませんし、この先は薄暗い階段になっており見た目では非常階段にしか見えません。挙句の果てに案内表示もホテルだけですので、ここが駅への連絡通路とはツーリストには分かりません。(もっとも大幅遅延が頻発する国鉄でバンコク中心部に行こうと思う人もほとんど皆無ですが・・)

MRTレッドラインは国鉄ドンムアン駅を挟んで遠い側に作られます。駅からターミナルビルへの利便性も考慮した設計になれば、ドンムアン国際空港への新たな交通手段として大きな選択肢になるのではと思います。

路線図の最新版

少しネットをあさって見ましたが、2017年の開業駅を反映した路線図と言うのは殆ど見つけることができませんでした。そんななか唯一見つかったのが、MRTを運営するBEM(Bangkok Expressway and Metro)の作成した以下の路線図です。路線図では開業済の路線は色付きの実線で、計画中や建設中のものは破線や薄い色で示されています。

ただ解像度が4000px×3088pxとPCで表示することを想定していないような、超巨大サイズです。おまけに文字が小さいので解像度を落とすと文字が潰れて見えなくなってしまうというなんともタイらしい仕上がりです。そこでPDFに変換したものを掲載しました。上の画像をクリックするとPDFが表示されるようになっています。

4 responses on バンコク都市交通網(2018年3月現在)

  1. あさと より:

    2020年以降の変化でしょうけど
    私はきっともう行かなくなっているでしょうね
    始めてバンコクに行った頃は全て「ゼロ」でしたから
    とても感慨深いものがあります
    当時どこに行くにもタクシー・バス・バイタクを乗り継いで行きました
    若かったからこそできましたが
    今も同じようにせよと言うと絶対に嫌ですね(笑)

    1. ま~く より:

      あさと さん

      2014年に発表されたバンコクの都市交通網計画では、全計画線の完成見込みは2028年でした。しかしあの国で計画が予定通り進むはずもなく、現在では2032年と言われています。

      タクシーやモタサイを乗り継いでならまだ良いですが、バスもとなるとなかなか大変ですね。海外で路線バスの乗車となるとなかなかハードルが高い気がして、私は数回しか経験がありません。

      > 始めてバンコクに行った頃は全て「ゼロ」でしたから
      > とても感慨深いものがあります
      この間隔は私は上海で味わいました。初めて私が上海に行ったのは30年近く前ですが、当時は地下鉄どころか高層ビルもほとんどない状態でしたから、現在の変わりようには驚いています。

  2. 鉄路迷 より:

    昔はバンコクには地下鉄やモノレールは作ることが困難と言われていたので、
    技術が上がってからの建設ですから都市交通の整備は遅れてしまいましたね。
    いろいろ繋がってから威力が発揮されますからもう少し様子を見てみましょう。
    もう少し開業が進めば渋滞もどうにかなってくるかもしれませんね。
    国鉄もクルンテープからターミナルが移転するようですから、そうするともう少し国鉄線の定時率も上がるかもしれません。
    なにしろほとんどの原因はクルンテープ駅の線路容量が足りないことによるものですからね。

    1. ま~く より:

      Dr.鉄路迷 さん

      何事も計画通りに進まない国ですので、完成するのがいつになるのか分かりませんが、2020年代中盤にはかなり便利になっているでしょうね。ただ我々のようなツーリストにとっては空港へのアクセスを改善して欲しいというのが痛切な思いです。スワンナプームに関しては、ARLがありますが本文に書いた通り充分な体制になっていません。ドンムアンに至っては国鉄が機能していないうえ、スワンナプームとのアクセスも不十分です。先日の記事で書いた高速鉄道計画が実現すればこれらの問題は解決するのかもしれませんが、計画自体がまだ構想段階なので整備が始まるのはまだまだ先ですね

      バンコク中央駅の機能がフアランポーンからバーンスーに移転すれば、長距離バスのターミナルも比較的近いですし便利になりそうですね。移転を機に国鉄の定時率が上がることは期待したいですね


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