Boeing 738 MAX 8 各国で運航停止に

エチオピア航空のアディスアベバ発ナイロビ行きET302便が現地時間の3月10日午前8時44分ごろ、エチオピアの首都アディスアベバ南東のオロミア州ビショフツで墜落し乗客149人と乗員8人の計157人が全員死亡しました。事故を起こしたのはボーイング社の最新鋭機737 MAX 8(ET-AVJ)で、昨年の11月に納入されたばかりの機材です。

この事故を受けエチオピア航空当局が同国内の航空会社に対し、同型機の運航を停止するよう通達しました。また中国政府は3月11日に中国国内の航空会社に対し737 MAX 8の運航停止を命じました。そして翌日にはインドが同様の措置を講じ、EU(欧州連合)はEU域内の同型機の運航を禁止しました。日本の航空会社で同型機を現段階で運航している会社はありませんが、737MAXシリーズは受注状況が好調で同社のサイトによれば、これまで5,012機を受注し376機を納入しています。しかし事故が相次いだことで、キャンセルの発生や受注環境の変化も予想されます。

737 MAX 8の事故については、昨年10月に起きたインドネシア・ライオンエアのJT610便(PK-LQP)の事故が記憶に新しいところです。JT610便も納入から2か月という早い段階で事故を起こしていますが、その原因については次第に詳細が明らかになってきています。JT610便では離陸前のタキシングの段階で、左右にふたつある「迎え角(AOA)」センサーの片方に異常が起きていることをパイロットが確認していたようです。AOAとは飛行機の翼と空気の流れを表示するセンサーで機体の姿勢を把握するための重要な計器です。

ライオンエアの事故では離陸後に主翼のフラップを引っ込めるとすぐに、MCASという737 MAX 8から導入された失速防止装置にAOAの誤った計測値が入力され作動し機首を下げる動作を始めます。パイロットはこれに対し操縦桿を引き機首を上げようとしますが、ついには抗えなくなり墜落した、というのが原因のようです。ライオンエアの事故機のPK-LQPでは、前日の運航でも同様のトラブルが発生していたようです。しかしこの時は事故便と同じくはじめは機首を上げようと操作したものの、MCASのスイッチを切ることで安定を取り戻したようです。

ライオンエアのケースでは、前日のフライトで問題が起きていたにも関わらず対処しなかったこと、パイロットがAOAの異常に気が付いていたにも関わらずそのまま離陸したことなど、人為的な問題が事故の直接的な原因といえるかもしれません。しかしそれ以前にAOAの誤検知データをもとにMCASが作動することがなければ事故は起きなかったはずです。今月のエチオピア航空の事故も離陸直後に起きていることを見ると同様の問題が起きていた可能性は低くないものと思われます。

一方、製造元のボーイング社はライオンエアの事故後、各航空会社向けに機器に異常が発生した場合の対応について速報を流しています。また3月12日に新型機の777Xの発表会を予定していましたが、事故を受け延期しています。一方で米国連邦航空局(FAA)も安全性を確保するための整備や改修を指示する「耐空性改善命令(AD)」を発行していましたが、今回のエチオピア航空の事故を受けより強い指示を出す模様です。エチオピア航空の事故でも一日も早い原因の解明、再発防止対応がなされることを切に願うとともに、事故の犠牲者のご冥福を祈るばかりです。

(2019年3月13日現在)
上記表のJIAというのがANA分の発注です

(追記)
米時間3月13日に、トランプ大統領の737 MAX 8運航停止を命令を受け、Boeing社は納入済の航空会社に運航停止を求めています。