一般公衆浴場(銭湯)考

先月から今月にかけて一般公衆浴場、所謂銭湯に何度か行く機会がありました。しかしいざ行こうと思うと、その数の少なさに驚きます。小生の住む市には本稿執筆時で11軒の銭湯がありますが、ここ3年程の間でも2軒が閉鎖しているようです。詳しく調べてみるとこの傾向は全国的な傾向のようです。


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ここ20年程の間の各都道府県における、公営・民営の一般公衆浴場の数を示したものです。(法律上「その他公衆浴場」に分類されるスーパー銭湯や、「娯楽施設」に分類される健康ランドは除きます) 全国規模で見ても20年前の半数以下に減少している事が分かります。自宅に風呂がない家と言うのは、昨今では殆どないでしょうから、銭湯と言うのは斜陽産業のようにも映ります。

そんな先入観を持ちながら、実際に銭湯に行ってみると意外と何処の銭湯も混んでいるのに驚きます。何度かに渡り数軒の銭湯を訪問しましたが、常に2ケタ以上の先客があり、風呂に入っている最中も次々と客が入ってきます。健康ランドのように風呂に出た後にリクリエーションがあるわけではありませんので意外と回転は良い印象を受けます。閑散として活気のない事前イメージがありましたが、間違っていたようです。

また入浴料が割高なスーパー銭湯や健康ランドが次々とオープンしていることを考えれば、「自宅外で風呂に入る」と言う需要はそれなりにあるようにも思います。それにも関らず銭湯が減って行くというのは、価格設定に問題があるのかもしれません。銭湯の入浴料は昭和27年に制定された物価統制令の規制が唯一残る分野で、その上限価格は都道府県ごとに制定されています。主な都府県と最高及び再安の入浴料を比べてみると以下のような形になります。

  大人
(12歳以上)
中人
(6歳以上12歳未満)
小人
(6歳未満)
東京都 460円 180円 80円
神奈川県 470円 200円 100円
大阪府 440円 150円 60円
千葉県 430円 170円 70円
宮崎県 350円 130円 60円

※全国浴場組合のサイトより抜粋

これはあくまでも上限価格ですので、これよりも安い価格で営業してもかまわないのですが、実質的にはこの公定価格通りの料金で営業している銭湯が殆どです。仮に400円の入浴料の銭湯に毎日100人のお客さんが来て、1カ月25日営業するとなると、その売上高は以下のようになります。(※東京都浴場組合のサイトによれば1施設の1日の入浴者数平均は約120人)

 400円 × 100人 × 25日 = 1,000,000円

実は多くの自治体において銭湯で使用する水道料金は低く抑えられている。東京都の場合でも「従量料金について、1月当たり5m³を超える使用水量1m³につき15円を乗じて得た額」+消費税となっています。仮に毎日10,000リットルの水を使ったとしても、経費としては殆ど無視できる金額です。しかし燃料費、営業するための電気代はそれなりの金額になるでしょうから、、人件費に回せる金額はあまり多くはなさそうです。こう考えると経営状態が厳しい事は容易に想像できますし、銭湯減少の原因なのでしょう。

とは言え、銭湯が世の中から全くなくなったら困ると思いますし、たまに自宅とは違った大きな湯船につかると言うのも気持ちの良いものです。銭湯の経営状況が少しでも改善し、これ以上の減少に歯止めがかかる事を祈るばかりです。

6 responses on 一般公衆浴場(銭湯)考

  1. いはち より:

    私の学生時代は・・当然アパートに風呂なんて無くて毎日銭湯に通って
    いました。一番混んでいるのが八時から九時の間だったのを記憶しています。
    当然洗い場で洗っている人の後ろに立って順番を待ったりしました。
    西千葉だったんですが、アパートの数に対して銭湯が少なくて3軒ある銭湯の
    定休日がそれぞれ違っていたんですよ。だから他の銭湯から客が来る日は
    何となく混でいたりして・・だから風呂やって儲かるかも?なんて思って
    いました。

    銭湯が無くなって行くのも寂しいですね。
    現在の値段だったら、風呂無し3万円のアパートに住むよりも風呂付き5万円
    のアパートに住んだ方がコスパが良いかもしれませんね。

    1. ま~く より:

      いはちさん

      私の場合は、子供の頃から自宅に風呂があった事もあり、銭湯に初めて行ったのは成人してからでした。学生時代に友人宅に泊っていた際に、銭湯に行ったのが最初です。

      確かに風呂無しのアパートを選ぶ理由は家賃面では理由にならないですね。銭湯代を考えれば確実にコメントに書かれたような価格差は埋められます。一人暮らしならまだ銭湯代の負担も小さいですが、家族でとなると月あたりかなりの金額になります。そういう意味では銭湯に通うと言うのは贅沢とも言えるかもしれません

  2. あさと より:

    自宅に風呂があったため同世代の人より銭湯に行ったことが少ないのですが
    それでも時折
    フラッと行ってみたくなります
    私の住んでる所は
    数年前まで公団住宅がありました
    そこの1部が単身用の住宅でバスなしでした
    なので家の近くには銭湯が100m四方に3軒もありました
    住宅公団がユーアールに変って立て直しが数年前にあって
    単身用もなくなったので
    やはり先頭は2軒廃業になりました

    1. ま~く より:

      あさとさん

      1996年時点で大阪には1,502軒の銭湯がありましたが、20年後の2015年には半数以下の654軒にまで減少しています。大阪でも他と同じく銭湯は減少傾向のようです。

      ただ大阪には行ってみたい銭湯があるんですよね。御堂筋の日航ホテル近くにあるらしいのですが、ある芸人さんが紹介していたのをラジオで聞いて気になっているのです。機会があればそちらも行ってみたいですね

  3. 餌釣師 より:

    実は私の家は子供の頃は風呂が無く、銭湯通いでした。
    そういう家庭も少なくはなかったので、当時の銭湯は常時かなりの人数が滞留していたと思います。
    ある意味に生活に必要な設備だったわけですね。
    しかし、いはちさんも書かれているとおり、今や風呂無しのお部屋も少なくなり、そうなると銭湯≒必需品?というわけでもないので、料金の上限は撤廃してしまってもいいような気がします。
    その一方で、経営側は客を呼び込もうと思ったら非日常?を演出するエンタメ的な要素も必要となるわけで、スーパー銭湯のようなものしかビジネスとしては成り立たなくなるのも仕方ないのかな?とも感じてしまいます。

    ご指摘の通り、斜陽産業であるのは間違いなく、かといって国や地方公共団体が保護をする産業でもないので、今のままで行けば将来無くなってしまうんでしょうね。
    近い将来、「日本(ないしは都内の)最後の1軒となった銭湯が廃業」なんてニュースが報道される気がします。

    1. ま~く より:

      価格統制令は終戦直後にできた法律ですし、適用されるのは銭湯の価格のみとなりましたのでそろそろ役目を終えても良いかもしれませんね。自宅周辺の銭湯を何軒か回りましたが、何処も施設の老朽化が進んでいます。なかには木造で大きな地震が来たら壊れてしまいそうな所までありました。なかなか修繕費用を捻出するも難しいのかもしれません。ただスーパー銭湯なんかのにぎわいを見ていると一定程度は「自宅外の風呂に入る」と言う需要はありそうです。

      都道府県単位でみた場合、県内に1軒しか民営の銭湯がないと言うところが4県あります。これらの県では銭湯がなくなる日も遠くないかもしれません。


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