B787に耐空性改善命令(Airworthiness Directives)

昨日は速報の段階で記事を作成したため、高松空港へ緊急着陸したNH692の煙発生の原因までわからない段階であった。その時点では、国土交通省が重大インシデントに指定するだろうと言うことまでは予想していたが、事態はそれ以上に深刻であったようである。

それを端的に示すのがアメリカ連邦航空局(FAA)が耐空性改善命令(Airworthiness Directives [通称:AD])を発令し、バッテリーが発火する恐れがあるとして米国登録のB787全機の運航停止を求めた。米国法であるため法的拘束力のあるのはユナイテッド航空(UA)の6機のみであるが、同時にFAAは世界すべてのB787について運航停止を要請している。昨日も書いたように新型航空機で不具合が頻発するケースは珍しくはないが、FAAが運航停止まで踏み切るのは異例の対応といえる。またこれを受け日本の国土交通省も、日本航空と全日空に、B787の運航停止を命じた。

B787 では積極的に新しいテクノロジーが採用されており、従来機では油圧で動かしていたものを電子制御にしたり、与圧のコントロールを電気式へ変更になったりしている。つまり従来機に比べ電気を多く必要とする機体であり、それだけにバッテリーへの負担も大きい。そこで大容量かつ軽量化を図ることができるリチウムがバッテリー素材として採用されたようである。

バッテリの素材として使用される物質には、リチウムとニッケルという2つの物質がある。両物質の違いは関係するサイトをごらん頂くとして、リチウムはバッテリの素材としてはニッケルをはるかに凌駕する。
しかし一方でリチウムは非常に燃えやすく、電気を帯びると膨張するという性質を持つ。(携帯電話のバッテリが膨張したという経験がある方もいると思う)リチウム電池ではIC回路を用いて膨張を抑えるという手法がとられているが、これに失敗するとS社のノートPCでおきたようなバッテリ発火事故がおきる。
(ちなみに理由は知らないがトヨタのプリウスでは、ニッケル電池が採用されている。)

いずれにしても今回のFAAの異例の措置は、B787の中核ともいえるバッテリに着目してのことであり、早期の運航再開は難しいのではないかと思われる。

<リチウム燃焼実験の様子>

6 responses on B787に耐空性改善命令(Airworthiness Directives)

  1. 餌釣師 より:

    報道の解説よりMKさんの説明の方がわかりやすいです。
    なるほど、携帯のバッテリーが膨れるのはリチウムバッテリーの特徴なんですね。
    B社としては、下請けの日系各社の責任にせず、あくまでも自社の問題として取り組んでいただきたいものです。
    でも、日系企業をあれほど採用しながらもこれだけの問題が出てくるとは、いかに前例のない最新テクノロジーを導入し、すごく精緻なバランスの上で作られたものなのでしょうね。

  2. あさと より:

    リチウムバッテリーの特性は
    出始めのころではなくすでに2桁の年数がたってるわけですので
    解ってると思われます
    それを採用するわけですので
    その特性を安全に制御できる対策も採られていると思います
    その対策がバッテリーサイドなのか
    そのバッテリーのまわりの制御機器なのか
    はたまた接続組み立てなのか
    多分このあたりも答えで
    企業の力関係のいやはや国の力関係も見えそうです・・・・

  3. いはち より:

    プリウスはニッケル水素電池を採用していますね。
    これは衝突時に外部からの力が加わった時に
    リチウム電池だと結晶破壊が起きたときの事を想定して
    高価ですが、安全なニッケル水素電池にしているのでしょう。
    あと、リチウムの安全性を高めている間にニッケル水素電池が
    改良された事もあったのでしょう。
    今回の事故の原因は良く判りませんが、充電時の不正制御も
    考えられますね。
    いずれにしても鳴り物入りで採用した新型機がこんな形で
    乗れなくなるのは、とても残念です。

  4. ま~く より:

    餌釣師さん
    民生品のリチウム電池に関する問題で、リコール等があったのは
    我々の業界にも身近な出来事でしたね
    週末の報道でも「準国産」等と言う表現が飛び交っていましたが
    国内メーカーの部品が多く採用されていますので、国内産業に
    与える影響も大きいと思います。
    B社も米国政府がここまで強い措置がに出ていますので本腰を入れて
    調査をせざるを得ないでしょう。安全確保には全力をあげて
    貰いたいものですね

  5. ま~く より:

    あさとさん
    リチウムが燃えやすい金属である事は、中学の理科の授業でも
    燃焼実験をするくらいですから専門家であれば常識の範囲かと思います。
    それでもそういった素材を採用するにはおっしゃるようにきちんと
    対策がとられているものと思います。
    原因が何処にあるのか、きちんとした原因究明が求められますね

  6. ま~く より:

    いはちさん
    以前にトヨタの関連企業の仕事をした事がありますが、トヨタの
    品質基準は非常に厳格で、危険性が少しでもあると製品に
    採用される事はありません。ニッケルの採用背景にはそんな
    こともあるのではと推測しています。
    B787が消える事はないとは思いますが、飛行機好きとしては
    早く復活してほしいものですね

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