今年の年頭に全日本空輸(以下、ANA)をめぐるニュースが飛び込んできた。内容は以下のようなものである。
ANA、超大型エアバスA380導入 3機1500億円
ANAホールディングスは欧州エアバス製の超大型機「A380」3機を国内勢で初めて導入する。発注規模は定価ベースで約1500億円。国内線は人口減で頭打ちとなっており、国際線の拡大に向け大型投資に踏み切る。2018年度にハワイ路線などに投入する見込み。1座席当たりの運航コストが低い超大型機の就航により、人気の太平洋路線で運賃競争が激しくなりそうだ。A380は総2階建てで500席超の座席設定が可能な世界最大の旅客機。1度に大量の旅客を輸送できるため、競合機に比べ1座席当たりの運航コストが約15%低いとされる。07年にシンガポール航空が世界に先駆けて就航させ、独ルフトハンザ航空やアラブ首長国連邦(UAE)ドバイを拠点とするエミレーツ航空が導入している。
ANAは14年に国際線の旅客輸送実績で日本航空を抜き、国内首位に立った。ただ首都圏発着のハワイ路線で提供する座席数シェアは約20%。約35%の日航に差をつけられている。日本からハワイへは年間約150万人が訪れ、航空各社の平均搭乗率は80~90%。ANAはハワイ路線の既存機材の2倍超の座席数を設定可能なA380の導入で1便当たりの旅客数を増やし、シェアを高める。
(2016/1/1 日本経済新聞)
実現すれば国内航空会社では初めてとなる、A380の導入となる。航空ファンとしては見る分には楽しみが増えるともいえるが、ANAにとっては一概に喜ばしいニュースとは言えないようである。
話の伏線は昨年8月のスカイマークの破たん処理である。当時は投資ファンド「インテグラル」+ANAの連合と、米航空機リース会社「イントレピッド・アビエーション(以下、イントレビット)」+デルタ航空の連合がスカイマークの支援に乗り出していた。支援先の選定はスカイマークの債権者の投票によって決定されたが、当時はイントレビットがスカイマークの債権の4割近くを持つことからデルタ連合が有利とみられていた。
しかしふたを開けてみると大差でANA連合が支援先に決まった。この結果について、当初からスカイマークの約3割の債権を有するエアバスに対して将来の航空機購入計画の密約があったのではとささやかれた。当時の記者会見でANAの長峯取締役は、「(そういう事実はないという)認識で良い」と明確に否定している。しかしANAが導入するA380はスカイマーク仕様で製造されたものを、機内レイアウトを変更して納入されるとの事でスカイマークが発注したA380の一部をANAが引き受ける形になったのは明白だ。
そもそも世界の航空会社の機材計画の流れは、B747のような大型機を使い一度に大量の客を運ぶというものから、B787のような燃費効率の良い中型機を使いきめ細かな路線を開設していくと変化している。だからこそANAはB767ではローンチカスタマーとして世界に先駆けて導入しているし、中・大型機はボーイング社の機材でそろえ整備コストの効率化も図ってきた。エアバス社の航空機はA320シリーズのみで、コンテナ搭載で効率よく運用できるものに限ってきた。こうした観点から見ても、ANAが超大型機のA380を導入するというのは、一貫性がないと言える。
華々しくデビューしたA380も上述の世界的な航空機戦略のトレンドもあり、不人気機種の筆頭と言っても過言ではなく、2014年、2015年と2年連続して新規受注を得られていない。また2013年に受領したマレーシア航空は業績不振からA380の転売方針を表明しているが、いまだに買い手は現れていない。ANAにとってA380が将来の負担にならない事を祈るばかりである
B787を世界に先駆けてANAが導入すると決まった時は、それなりに
喜ばしい事だと私は感じましたが、今回の導入に関しては「何故?」と
首をかしげたくなるような決定でした。
次回の株主総会ではこの決定が問題視されるはずです。
私、大きな飛行機はあまり好きでは無いので,導入されても乗ることは
たぶん無いと思います。
ハワイ路線に導入しても、ツアー客用の格安航空券の枠での運航になりそうですね。
いはちさん
よく他社への対抗意識をむき出しにすることがある会社ですのでS社の支援の時もそのような意識が働いたものと思われます。
確かに現在のホノルル線はANAが3便/日に対して、JALは4便/日の運航となっています。この送客力の差を埋めるには大型機材を利用することは確かに有効です。ただ特定路線のために大型機材を導入するというのは、通常では考えられない手段ですよね。
この飛行機自体は大好きなので
喜ばしいことなのですが
なんかね
すごく嫌な買い物をしていますよね
密約がANA~エアバス間なのか
棚ボタなのか
その前にA320の後継機がA320neoと言うことになった時も
嫌な感じがしました
ともあれ
世界初の横11席のアブレストをする恐れのある会社ですから
見守りたいですね
あさとさん
利用者としては(私は乗ったことがありませんが)楽しい機材だと思います。
でもやはりおっしゃるように嫌な買い物になっていますよね。
どのようなアブレストになるのかは確かに注目ですね。
横11席というのもありそうな感じがしています。
「認識で良い」なんて曖昧な言い方ですんで密約があったんでしょう(笑)
密約がなければ「密約など無い」と言いきればいいのに、そう言わないのは嘘をつきたくないという気持ちの裏返しだと思います。
あとになって事実が表面化しても、何とでも言い様がありますからね。
とはいえ、ANAにとってスカイマークを支援する事に何のメリットがあったんでしたっけ?
なんか本質が見えなくなってきたなぁ(笑)
餌釣師さん
いかにも日本人的な曖昧な言い回しですね。
まぁ当時も発言をそのまま受け取る向きは少なかったですが・・・
ANAがスカイマークを取りに行った一番の理由は発着枠の問題のようです。
実際に羽田の発着枠はANA単体ではJALよりも若干少ないですが、スカイマークを合わせるとJALを超えます。この分をJALやJALに親密な航空会社に渡したくないという事情があったようです