内藤とうがらし

江戸時代に江戸を中心に生産されていた野菜を江戸野菜と言うそうです。なかには小松菜のように全国に広まったものもありますが、多くの江戸野菜は明治以降に消滅していったようです。なかには亀戸大根や東京ウドのように復活プロジェクトによって、現存していた少量の種から復活を果たし少量ながらも生産されるものがあります。そんな江戸野菜のうちの一つで我が家で、元気に生育しているものがあります。それが内藤とうがらしです。

「内藤とうがらし」の名前の由来は江戸時代に生産されていた場所が、内藤清成(1555年-1608年)の江戸藩邸下屋敷(現在の新宿御苑)内の土地で栽培されていたことにちなみます。徳川家康が豊臣秀吉によって江戸に移封された際、内藤清成は鉄砲隊を率いて先陣を務めた功により四谷から代々木村にかけて20万坪以上の広い屋敷地を与えられていました。後に拝領地の一部に新しい宿場(内藤新宿)が開設されたため、宿場の部分を返上しますが明治維新まで内藤家の江戸藩邸として広大な土地を所有します。(現在の新宿御苑)

当時の大名は江戸参勤中に屋敷内に畑を設け自給自足するのが一般的でした。内藤清成の屋敷でも広大な敷地内で様々な野菜を栽培し、食べきれない分については屋敷内に市場を設け販売しました。そこで販売された唐辛子と南瓜が評判が高く、巷で話題となりました。すると周辺の農家でも内藤とうがらしの栽培をする者があらわれ、ついには秋になると新宿一帯は色づいた唐辛子で赤く染まったと言われるまでになり、この地の名産品になっていきます。折しも当時の江戸では蕎麦がブームになっており、その薬味として消費が増えたのが、生産増加に拍車をかけたようです。ところが辛みの強い鷹の爪が登場すると、内藤とうがらしの衰退に拍車をかけます。そして次第に内藤とうがらしは忘れられた存在となっていきます。

そんな内藤とうがらしを復活させようと「内藤とうがらしプロジェクト」と言う運動が2010年に立ち上がります。プロジェクトでは内藤とうがらしの栽培、販売、啓蒙活動を展開しています。そして2013年には江戸東京野菜に認定されています。そんなプロジェクトの活動には街中に置いたプランターで内藤とうがらしを栽培しようという運動があります。実は以前に四ツ谷地域で懇意にしていた飲食店でも、この活動に参加していたことから、プランターで育ていました。そこで店主にお願いし、実った内藤とうがらしの実をひと房譲り受けていたのです。

翌年にその種をプランターに蒔くと、見事に発芽してくれ生育してくれました。そして年を増すごとに元気に成長してくれ、今年はかなりの収量となりました。内藤とうがらしは鷹の爪と比べると辛みが弱く、うま味が強いという特徴があります。うま味成分であるグルタミン酸の含有量は鷹の爪の2倍以上とです。我が家で頻繁に食卓に上るタイ料理には向きませんが、和食を作る際にはうま味の強さが活かされます。貴重な内藤とうがらしですので、今後も大事に育てて行こうと思っています。

今年は特に元気に育ってくれました。

我家ではタイの唐辛子も育てています。
しかし唐辛子は他品種と交雑しやすいので、別な場所で育てています。

4 responses on 内藤とうがらし

  1. いはち より:

    なるほど。これは内藤唐辛子と呼ばれる種なのですね。
    昔祖母が植木鉢に植えて育てていましたが、食べた覚えが無いんです。
    子供だったので食べさせてもらえなかったのかもしれませんが、この唐辛子には
    そんな歴史があったのですね。
    見た目にも緑に赤が映えてとても綺麗に庭を彩っていた記憶があります。
    種が売っているなら探して畑に植えてみようかと思いました。

    1. ま~く より:

      いはちさん

      残念ながら内藤とうがらしの種は売られていないと思います。「内藤とうがらしプロジェクト」に関係する人から種を分けてもらうしかないと思います。ただ普通の鷹の爪でしたらスーパーなどで売られているものでも加熱処理をされていないものであれば、発芽するかもしれません。

      唐辛子類は種類が多くなかには観賞用のものもあったりしますので、御婆様が育てられていたのはそういった種類だったのかもしれませんね

  2. あさと より:

    京野菜・金沢野菜は知っていましたが
    江戸野菜は知りませんでした
    大阪にもご当地野菜があるくらいですから
    江戸にも存在してたというのは当たり前ですよね
    しかし・・・・
    これを栽培しようとするのは
    ま~くさんならではですね

    1. ま~く より:

      あさとさん

      昔は地域ごとに栽培する野菜も違いがあったのですね。なかでも一番有名なのはおっしゃるように京野菜ですね。内藤とうがらしを栽培しようと思ったのはやはりタイの唐辛子なんかを育てるようになった影響もあります。外国のものに触れる機会が多くなると、日本の固有種を大切にしなければという考えも生まれるようになってくるようです


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