先週末の24日にタイの下院選挙の投開票が行われました。タイ選挙委員会が25日午後に発表した小選挙区(350議席)における各党の獲得議席と得票数は以下の通りです。
政党名 | タイ語名称 | 政治姿勢 | 得票数 (単位:万票) |
小選挙区 (定数:350) |
---|---|---|---|---|
タイ貢献党 | プアタイ | タクシン派 | 742 | 137 |
国民国家の力党 | パランプラチャーラット | 親軍政派・反タクシン派 | 794 | 97 |
新未来党 | – | 反軍政派 | 587 | 30 |
民主党 | – | 反タクシン派 | 370 | 33 |
タイ誇り党 | プームジャイタイ | イサーン地域政党 | 351 | 39 |
※3月25日16時 タイ選管発表(開票率94%)
事前の苦戦予想に反して軍政を支持する国民国家の力党が最大得票数を得ましたが、小選挙区での議席数ではタイ貢献党に大きく差をつけられました。今後確定する比例代表での議席数と合わせても上院と合わせた過半数獲得は微妙な情勢です。
また思った以上に得票数を伸ばせなかったのが、小選挙区で最大議席を得たタイ貢献党です。最終的には比例代表の150議席は得票数によって割り当てられ、議席数が確定することになりますが一定数の議席を得た政党は、それ以降比例代表での議席配分がなくなるので第1党となったタイ貢献党が大きく議席を積み増すということはない見込みです。
一方でかつてはタクシン派の協力なライバルであった民主党は大きく後退し、過去最低の議席数にとどまりましたこの結果を受け、、アピシット党首は党首の辞任を表明しています。。タイ選挙委員会では残る比例区の議席配分を5月6日までに確定するとしていますので、しばらくは各党の議席数が確定しない状態が続きそうです
今回の選挙結果を胆略的に見ると、これまで絶大な強さを誇ったタイ貢献党が退潮し軍政派が躍進したと感じるかもしれません。しかしタクシン派、反タクシン派という二軸で見てみるとやはりタイの政治構造が変わっていないという印象を受けます。
まず世界の批判を浴びながらもタクシン派に不利な選挙制度を導入したことでもわかるように、軍政は最大の反タクシン派と言えます。また民主党は軍政に近い立場の党員と軍政に距離を置く党員が入り乱れています。世論調査の結果でも民主党支持者の多くが、国民国家の力党に票が流れたことが伝えられています。今回、反軍政の立場をとるアピシット党首が大敗を受けて辞任したことで、党内の軍政派の勢いが増すことが予想されます。そうなれば軍政の傀儡政党である国民国家の力党と連立を組む可能性もあります。
一方で今回躍進した新未来党は自動車部品大手の御曹司であるタナトーン氏が設立した革新政党ですが、「タイは特定層だけが富を得る不平等な社会だ」との立場で思想的、政治的立場はタクシン派に近いといわれています。つまり政党が分散しただけで、以下のような図式が浮かび上がってきます。
タイ貢献党+新未来党 :タクシン派
国民国家の力党+民主党:反タクシン派
各党の得票数をタクシン派、反タクシン派の二軸で集計すると、相変わらずタクシン派の支持が上回るという結果になります。いずれにしても今後の議席の最終確定と、連立交渉の行方には注視する必要がありそうです。
ただ個人的にはいくつか気になる点があります。まず事前の世論調査の結果と異なり軍政派が最大得票を得たことで、反軍政派が選挙に不正があった申し立てる可能性があることです。すでにタイのSNSでは「選挙不正」などの言葉が飛び交っています。今後、デモ活動や反軍政集会が活発化し、2008年のスワンナプーム国際空港が占拠されたような大混乱は避けてほしいものです。
また選管が比例代表の結果確定を5月6日としているのも気になります。ワチラロンコン国王の戴冠式までにという事でしょうが、日本では大型連休付近という事になります。タイにも多くの日本人が訪れているでしょうから、訪タイ日本人に影響が及ばないことを祈りたいと思います。
こう言うことを書くと
リベラルな考えとは違反するのですが
タイにはタイの民主主義があったわけです
それが是か非かは
先進諸国がとやかく言うべきことではないように感じます
ただ
厚い信頼のあったプミポン大王なき社会で
タイの国民も
自分達で何とかしないとならないと言う意識が芽生えないと
トップにたつ為政者の独裁政権になりかねません
今までは
反政権の軍だったのが
政権の軍なのですから
抑止力にはなりません
今の国王がどういう立ち位置なのかもですね
タクシン寄だとは言われてますが…
あさと さん
タイの政治については他国のことですので、良い悪いといった論評をするつもりはないのですが、状況をよく見定めて場合によっては何らかの判断をする必要があると思っています。私の場合は、普通の日本人とタイで大きな制度変更などがあると、少なからず影響がありますので・・・
前国王は基本的には政治のことは国会等に委ね問題が起きた時に仲裁者として存在感を発揮していたように思います。現国王は憲法草案を差し戻したりという事もあったように、前国王とはスタンスが異なるようですので色々と政治面にも影響があるかもしれません。