日本の免許制度の歴史

11月から普通自動二輪(小型AT限定)免許の取得の様子を記事にしましたが、今回はそれに関連した話を書いてみたいと思います。それは日本における運転免許の歴史です。

自動二輪免許の歴史

二輪免許の誕生:1947年(昭和22年)

免許種別 運転可能な自動二輪
第三種小型 1,500cc 以下
第四種小型 150cc以下

それまで小型自動車の免許証を取得すればバイクの運転も可能でしたが昭和22年の法改正によって、日本で初めてバイクの免許が誕生します。法改正以前に小型自動車の免許を取得していた人は、自動的に第三種小型の免許が付与されます。

ただ当時は現在と違い教習所等はありませんので、警察署での面接で取得できたようです。

「自動二輪」の誕生:1949年(昭和24年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
軽自動二輪 150cc以下

バイクの免許の誕生から2年後に初めて「自動二輪」という言葉が登場し、第三種小型が自動二輪と改められます。また第四種小型も軽自動二輪と改められます。

「原付」の誕生:1952年(昭和27年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
軽免許 250cc以下
原付許可 90㏄以下

それまでの軽自動二輪の名称が改められ、軽免許となり運転できるバイクも250㏄以下に変更となります。また手軽に乗ることができるバイクの区分として原付許可というカテゴリができます。「免許」という名称ではなく「許可」となっているのは届出制で申請すれば誰でも乗ることができたためです。原付の排気量に関しては現在と違い90㏄となっています。

原付の細分化:1954年(昭和29年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
軽免許 250cc以下
原付二種許可 125㏄以下
原付一種許可 50㏄以下

原付の誕生から2年後に、排気量をもとに細分化されます。ここで初めて日本独自の規格である排気量50㏄の「原付1種」カテゴリが生まれます。

それにしてもこの頃はめまぐるしく制度が変わりますね。

原付許可から原付免許へ:1960年(昭和35年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
軽免許 250cc以下
原付二種 125㏄以下
原付一種 50㏄以下

道路交通に関する法律が道路取締法から道路交通法に変わったのと同時に原付は許可制から免許制に変更となります。これにより届出るだけで良かったものが、原付も試験を受けて合格しなければならなくなりました。

シンプルな制度に変更:1960年(昭和35年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
原付 50㏄以下

軽免許と原付二種が廃止となり、自動二輪に一本化されます。自動二輪の免許を取ればどんなバイクでも乗れた時代です。小生の母親はこの時代に自動二輪の免許を取りましたが、そうした人はその後の免許制度の改定では大型二輪の免許を与えられています。

当時は二輪の免許は運転免許センターに行き、一発試験を受けるのが一般的だったようです。

排気量別の免許が復活:1972年(昭和47年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
自動二輪(小型) 125㏄以下
原付 50㏄以下

これまでの自動二輪に125㏄以下の排気量のバイクのみ運転できる、小型バイク限定の免許が新設されます。これにより免許の種類としては、あくまでも自動二輪ですが運転できるのは、小型に限るという現在にもつながる限定条件の免許が生まれます。またこの年は自動二輪に乗車する際のヘルメット着用が義務化されたことでもバイク乗りには大きな変更のあった年です。ただ小型二輪以下のバイクはまだ義務化されていませんでした。

大型バイクが乗りにくい制度へ:1975年(昭和50年)

免許種別 運転可能な自動二輪
自動二輪 制限なし
自動二輪(中型) 400㏄以下
自動二輪(小型) 125㏄以下
原付 50㏄以下

暴走族問題の深刻化から自動二輪に関する免許制度が大きく変わり、大型バイクを乗るための免許が取りにくい制度へ変更されます。排気量400㏄までの中型限定の免許は教習所に通えば取得できるのに対し、それ以上の排気量のバイクを乗るには運転免許センターで所謂「限定解除」という試験に受からないと取得できなくなります。試験項目には服装や言葉遣いなども含まれていたと言われ、当時の合格率は1%程度と非常に低いものでした。

大型バイクに対する規制はメーカ側も「自主規制」という形で参加します。国内で流通するバイクの国内の最高速度を180km/hにしたり、750㏄を超える排気量のバイクの国内販売をやめます。当時は750㏄以上のバイクに乗りたいと思ったら国内メーカのバイクでも逆輸入しないと乗れない時代でした。

一方でヘルメット着用に関しては、1975年に小型自動二輪で、1986年に原付で義務化されすべてのバイクで義務化されることになります。

大型免許の取得要件緩和:1995年(平成7年)

免許種別 運転可能な自動二輪
大型二輪 制限なし
普通二輪 400㏄以下
普通二輪(小型) 125㏄以下
原付 50㏄以下

ハーレーダビットソンなどの大型バイクの売行き不振を背景に、第42代米国大統領ビル・クリントンは、日本の二輪免許制度が「非関税障壁だ」といちゃもんをつけ是正を要求します。これをきっかけに20年ぶりに制度変更が行われ、大型二輪免許と普通二輪免許という免許を新設し、ともに教習所で取得可能とします。また中型二輪に関しては、排気量125㏄以下のみ運転可能な条件を設けます。

大型二輪が教習所で取れるようになった以外でも、この時の制度変更は大きな意味があります。それまでは中型限定の自動二輪しか持っていない人が750㏄のバイクに乗った場合は、「眼鏡等」と免許証に書かれている人が眼鏡を忘れて運転したのと同じような扱い単に条件違反で済みました。しかし制度変更後は免許の種類が分かれましたので、同様のケースでは無免許として扱われることになりました。単なる名称変更のようですが法律的には大きな変更となりました。

以前の制度に馴染んだ人にとっては「限定解除」というと大型バイクの免許をとるというのと同義語のように使われてきました。しかしこの時の改正で「限定解除」は小型限定の普通二輪の限定を外す意味となり、大型二輪に関しては新規取得という事になりました。

AT限定免許の導入:2005年(平成17年)

免許種別 運転可能な自動二輪
大型二輪 制限なし
大型二輪(AT限定) 650㏄までのAT車に限る
普通二輪 400㏄まで
普通二輪(AT限定) 400㏄までのAT車
普通二輪(小型) 125㏄まで
普通二輪(AT小型) 125㏄までのAT車
原付 50㏄まで

排気量の大きなバイクでもクラッチのないスクータータイプのものが増えているのを背景にAT限定免許が誕生します。ただ不可解なのは大型AT車がなぜか650㏄以下に制限されていることです。これは何故なのでしょうね。まぁ750㏄のスクータータイプのバイクなんてものは現状ではないですので困りませんが、どこかのメーカが1000㏄のスクーターを作ったらこれでは乗れませんね。
(※注)2019年12月の法改正で大型二輪AT限定の排気量制限はなくなりました。

自動車免許の歴史(簡略版)

自動車免許の制度に関しても様々な変遷がありますが、こちらは二種や牽引など登場する車種が多く少し複雑です。そこでここでは大型自動車免許の制度が導入された、1956年(昭和31年)以降の自動車免許に絞って書いてみます。

大型自動車免許の誕生:1956年(昭和31年)

最大積載量 乗車定員
普通自動車 5,000kg以下 10名以下
大型自動車 制限なし 制限なし

これまでの普通自動車免許はすべての自動車が運転可能でしたが、大型自動車と普通自動車に2分割し乗車可能な車両を以下のように区別します。

最大積載量の変更:1960年(昭和35年)

車両総重量 最大積載量 乗車定員
普通自動車 8,000kg 未満 5,000kg 未満 29名以下
大型自動車 制限なし 制限なし 制限なし

道路交通法の施行により、普通自動車で乗車可能な自動車の区分が変更となります。またそれまであった「小型自動四輪車免許」が廃止され、普通自動車免許に統合されることになります。

道路交通法改正:1970年(昭和45年)

車両総重量 最大積載量 乗車定員
普通自動車 8,000kg 未満 5,000kg 未満 10名以下
大型自動車 制限なし 制限なし 制限なし

道路交通法が改正となり、普通免許で乗せることができる人員が29名以下から10名以下に変更になります。これはマイクロバスを運転できる免許証の区分が、普通免許から大型免許に変更になったことに伴う措置でした。これまで普通免許でマイクロバスを運転していた人を対象に、大型自動車マイクロバス限定免許の試験が実施されました。

中型免許の新設:2007年(平成19年)

免許 車両総重量 最大積載量 乗車定員
普通免許 5,000kg 未満 3,000kg 未満 10人まで
中型免許 11,000kg 未満 6,500kg 未満 29人まで
大型免許 制限なし 制限なし 制限なし

これまでになかった中型自動車免許という区分が新設されます。これにより普通免許で運転できる車が5t以下に制限されます。またそれ以前に普通免許を取得していた人には中型免許が与えらたが、運転できる車両は従来通りのものとなった。そのため運転免許証には「中型は8tまで限る」との条件書きがされた。

なお新規で中型免許を取るには普通免許等保有が通算2年以上、大型免許を取るには普通免許等保有が通算3年以上という制限も設けられることになりました。

準中型免許の新設:2017年(平成29年)

免許 車両総重量 最大積載量 乗車定員
普通免許 3,500kg 未満 2,000kg 未満 10人まで
準中型免許 7,500kg未満 4,500kg未満 10人まで
中型免許 11,000kg未満 6,500kg未満 29人まで
大型免許 制限なし 制限なし 制限なし

普通免許と中型免許の間に準中型免許という新しい免許が新設されました。中型免許は運転経歴が2年以上と20歳以上という取得条件がありましたが、準中型免許は18歳から取得できるようになり、少し敷居の高かったトラック系の免許が高校生でも取得できるようになります。

小生の免許

小生が普通自動車免許を取得したのは2007年よりも前の事になります。そのため、2007年の法改正時に8t限定の中型免許となり、免許証には「中型車は中型車(8t)に限る」との条件書きが記載されています。

そこで少し気になってこの条件書きを外す教習を受けると、どのくらいの費用が掛かるかと思って調べてみると10万円と思ったよりも費用が掛かるようです。11t車に乗る予定はありませんので、こちらの条件を外すことはなさそうです。

免許証の記載

余談的な内容ですが、昨日頂いたコメントをもとに少し追記します。タイでは二輪免許と自動車免許は別々に発行されますので、もし両方の免許を取った場合は免許証が2枚となります・

しかし昨日も書いた通り日本では一枚の免許証に持っている免許の種類が併記されます。免許の種類が増えたりすると当然ながら記載の方法も変更になります。例えば小生が一番初めに免許を取ったころは、すべての免許の種別が記載してあり取得している免許のの欄に「1」と記載されていました。

それがいつ変わったのか覚えていませんが、14個のマス目に持っている免許の種類の略称が漢字で記載されるようになりました。

長らく一番左下に「原付」と記載される形式になれていたのですが、2017年の準中型車免許が新設されたことで、14個のマス目は変わらないもののその記載方法が変更になりました。

中型自動車と普通自動車の間に準中型が割り込んできたので、他のものが押し出される形になっています。しかしマス目は14個のままですので、そのままでは溢れてしまいますが、牽引と牽引2種がひとマスにまとめられ14個のマスに収めています。

このように免許の記載方法も制度の変更に合わせて、改定が行われています。

振り返り

こうしてみてみると、自分が運転免許証を取得して以降も様々な制度変更があったことが改めて再認識しました。こうした制度変更は免許更新時の講習で説明を受けているはずですが、正直なところきちんと理解していなかったことも多かったです。改めてこうして自分が持っている資格について整理しておくのは有意義なことと感じます。

4 responses on 日本の免許制度の歴史

  1. あさと より:

    バイクにAT車があることすら知らない人間です(笑)
    時代に則して変わってきたのでしょうけど
    少し複雑ですね
    でもそのほうが気軽さがなくなって
    安全への認識も高まるのでしょうかね

    1. ま~く より:

      あさとさん

      今回の免許取得の事で改めて調べた部分もありますが、やはり少し複雑な気もしますね。諸外国ですと自動二輪の排気量によって制限がないところもあるので、余計にそう感じてしまいます

  2. いはち より:

    私、昔は全くバイクに興味が無かったのです。
    大型の免許が取れる時代にはオーディオばかりを
    趣味としていました。
    今考えたらもったいなかったですね。
    とはいえ、大型免許をとると大型バイクに乗らなきゃ
    ならないので、たぶん取らないと思いますが。
    それにしても良くまとめられましたね。
    日本花子さんってどこの人なのでしょうね。

    1. ま~く より:

      いはちさん

      「日本花子」の画像は公的機関が出しているサンプル画像です。実物ではないこともあり、よく見るとこの画像はあり得ないところもあったりします。

      知人で大型二輪をとっても50㏄にしか乗っていない人もいたりしますが、私は大型二輪までは取らないとは思います。ただミッションの感覚は会得しておきたいので、限定条件は外したいと思っています


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