開幕間近
オートバイの世界最高峰レースであるmotoGPですが、昨年(2020年)は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染流行の影響で、大きくスケジュールが変更して全16戦が開催されました。2021年シーズンに関しても最初に発表されたスケジュールからはいくつかの変更があったものの、3月28日のカタールGPで開幕する予定です。
今回は2021年シーズンの展望について書いてみたいと思います。マニアックな記事になりますので、興味のない方はスルーしていただければと思います。
2021年シーズンのスケジュール
Round | グランプリ | サーキット | 決勝 |
---|---|---|---|
1 | カタール | ロサイル・インターナショナル・サーキット | 2021/03/28 |
2 | ドーハ | ロサイル・インターナショナル・サーキット | 2021/04/04 |
3 | ポルトガル | アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベ | 2021/04/18 |
4 | スペイン | ヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエト | 2021/05/02 |
5 | フランス | ル・マン-ブガッティ・サーキット | 2021/05/16 |
6 | イタリア | ムジェロ・サーキット | 2021/05/30 |
7 | カタルーニャ | カタロニア・サーキット | 2021/06/06 |
8 | ドイツ | ザクセンリンク | 2021/06/20 |
9 | オランダ | TT・サーキット・アッセン | 2021/06/27 |
10 | フィンランド | キュミリング | 2021/07/11 |
11 | オーストリア | レッドブル・リンク | 2021/08/15 |
12 | イギリス | シルバーストン・サーキット | 2021/08/29 |
13 | アラゴン | モーターランド・アラゴン | 2021/09/12 |
14 | サンマリノ | ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ | 2021/09/19 |
15 | 日本 | ツインリンクもてぎ | 2021/10/03 |
16 | タイ | チャン・インターナショナル・サーキット | 2021/10/10 |
17 | オーストラリア | フィリップ・アイランド・サーキット | 2021/10/24 |
18 | マレーシア | セパン・インターナショナル・サーキット | 2021/10/31 |
19 | バレンシア | リカルド・トルモ・サーキット | 2021/11/14 |
昨年は中止になったアジア・オセアニアラウンドですが、今年は日本、タイ、オーストラリアでの開催が予定されています。一方でアメリカ、アルゼンチンでの開催は昨年に引続き開催されない予定となっています。
そのためスペインでは昨年同様に同一国で複数回の開催が予定されています。
参戦チーム
オートバイレースの世界最高峰クラスであるmotoGPに参戦するチームは、大きく以下の2種類があります。
- ファクトリーチーム
- サテライト(プライベート)チーム
ファクトリーチームはバイクメーカが直接運営します。そのため常に最新のマシンを、蓄積された豊富なデータをもとに使用する事ができます。一方でサテライトチームは、メーカからマシンを供給してもらう契約を結んで参戦するチームです。場合によっては型落ちのマシンを供給される場合もあります。
2021年シーズンに参戦するメーカは以下の通りです。
- ホンダ
- ヤマハ
- スズキ
- ドカティ
- KTM
- アプリリア
各メーカのファクトリーチームに加え、ホンダ、ヤマハ、KTMからマシン供給を受けるサテライトチームが1チームづつ、ドカティからマシン供給を受けるチームが2チームあります。昨年のタイトルホルダーのスズキは関してはサテライトチームはなく、アプリリアに関してはファクトリーチームとしての参戦ではありません。
2021年シーズンに関しては、新型コロナウィルス(COVID-19)による経済的打撃の影響を緩和するため新エンジンの開発ができないという特例レギュレーションが適用されます。昨年のマシンに問題を抱えていたメーカはエンジン以外の部分でどれだけ改善を図れるかも見どころです
各メーカの展望
ホンダ
種別 | チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|---|
ファクトリー | REPSOL HONDA | 93 | マルク・マルケス | スペイン |
44 | ポル・エスパルガロ | スペイン | ||
サテライト | LCR HONDA | 30 | 中上 貴晶 | 日本 |
73 | アレックス・マルケス | スペイン |
2013年にmotoGPに昇格していきなり年間チャンピオンとなってから、6度の年間チャンピオンを獲得した絶対的エースのマルク・マルケスですが、昨年スペインGPでの転倒、骨折し3度の手術を要したことでいつ復帰できるかに注目です。現段階では開幕戦に出場する方向で準備しているようですが、昨年12月の手術の際には復帰まで半年と言われていただけに微妙なところかもしれません。昨シーズンはマルクの不在でチャンピオンシップは大混戦になっただけに、出場してもしなくてもマルクの動向次第でチャンピオンシップは大きく変わりそうです。。
KTMから移籍してきたポル・エスパルガロはホンダ・RC213Vにどれだけ順応できるかが鍵でしょう。RC213Vは乗るのが難しいと言われ、順応するのに時間がかかるライダーも多いようです。直前のカタールでの公式テストのタイムを見ると少々苦戦しているように見えます。
昨年はコンスタントにポイントを積み重ね、ホンダ勢ではランキングトップとなった、中上貴晶には今年も期待です。昨年は型落ちとなる、2019年型のRC213Vを走らせていましたが、今年は最新型のRC213Vを走らせます。昨年は予選ではポールポジションを獲得したり、決勝でも表彰台圏内を好走する走りを見せてくれましたので今年こそは表彰台獲得を期待したいところです。
マルクの弟、アレックス・マルケスは、今年はサテライトに移籍しての参戦となります。昨年はRC213Vへの順応に時間がかかりましたが、後半では2位を2度獲得するなど順応性を示し始めていました。怪我が長引く兄に変わって主役に躍り出る可能性もありそうです。
ヤマハ
種別 | チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|---|
ファクトリー | MONSTER ENAGY YAMAHA MOTOGP | 20 | ファビオ・クアルタラロ | フランス |
12 | マーベリック・ヴィニャーレス | イタリア | ||
サテライト | PETRONAS YAMAHA SIC RACING | 46 | バレンティーノ・ロッシ | イタリア |
21 | フランコ・モルビデリ | イタリア |
昨年のヤマハは最多7勝を挙げながらも、エンジンの信頼性、タイヤとマシンの相性、ブレーキの不具合等で一貫性にかけるシーズンとなりました。ヤマハのマシンは他メーカよりも最高速度が30㎞/hほど遅いと言われていますが、新エンジンが投入できない今シーズンは引き続き、その状況は変わりません。
ただ直前の公式テストでは、二人のファクトリーチームのライダーは良い感触をつかんでいるようです。特に昨年苦しんだミシュランタイヤとの相性ですが、タイヤが消耗した段階での安定性が増しているようです。これは実際のレースがは勝負所の終盤に威力を発します。
昨シーズン最多勝の3勝を挙げ、サテライトからファクトリーチームに移ったクアルタラロに注目が集まるでしょうが、個人的にはもう一人のファクトリーライダーのビニャーレスに注目です。昨シーズンでも予選での一発の速さを見せつけていますし、マシンの一貫性が出てくればチャンピオンシップも見えてくるのではと思っています。
年間タイトルを7度獲得したバレンティーノ・ロッシは、クアルタラロと入れ替わる形でサテライト移籍し、42歳で開幕を迎えます。昨年は新型コロナウィルス(COVID-19)に罹患したり、好位置を走りながら転倒したりと不運に見舞われ悪循環に陥っていた感がありますので歯車がかみ合えば久しぶりの表彰台も狙えるでしょう。シーズン中盤までに、来シーズンも現役を続けるか判断するとしていますが、好結果を期待したいところです。
モルビデリは、ヤマハ勢では唯一「Aスペック」と呼ばれる2019年型の、YZF-R1を走らせます。ただ昨年はヤマハ勢では最も安定感を見せ、ランキングも2位になっています。同じマシンで参戦できる事はメリットかもしれません。今年もいくつかの勝利をヤマハにもたらしてくれるものと思います。
スズキ
種別 | チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|---|
ファクトリー | TEAM SUZUKI ECSTER | 42 | アレックス・リンス | スペイン |
36 | ジョアン・ミル | スペイン |
スズキは昨年とライダーの変更なしで臨みます。昨年は優勝回数は1回のみながら、コンスタントにポイントを積み重ね年間チャンピオンを獲得した、ミルは今年も安定した走りを見せてくれるでしょう。昨年のように混戦となった場合は、安定さは武器になるでしょう。しかしながら一発の速さという点では、物足りない気もします。シーズン4勝以上を上げるライダーが出てきた場合には、連覇は難しいかもしれません。
スズキに関しては、チームマネージャ(監督)を務めていた、ダビデ・ブリビオが離脱した影響がどの程度、現れるかも気になる気になるところです。ヤマハ、ドカティ、スズキと渡り歩きチームをまとめ上げた手腕は関係者の評価するところですので、影響は少なくないはずです。
ドカティ
種別 | チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|---|
ファクトリー | DUCATI TEAM | 63 | フランチェスコ・バニャイア | イタリア |
43 | ジャック・ミラー | オーストリア | ||
サテライト | Esponsorama RACING | 33 | エネア・バスティアニーニ | イタリア |
10 | ルカ・マリーニ | イタリア | ||
PRAMAC RACING | 5 | ジョアン・ザルコ | フランス | |
89 | ホルヘ・マルティン | スペイン |
エースだったアンドレア・ドヴィツィオーゾと契約しないという選択をした、ドカティはライダーが大きく変わりました。ドヴィツィオーゾに代わりエースに指名されたのは、ジャック・ミラーです。公式テストでも速さを見せていましたので、シーズンに入っても何度か表彰台の中央に上がる事でしょう。ロッシの愛弟子のバニャイアにも注目です。昨年は転倒、負傷の影響でランキングは沈みましたが、松葉づえをついた状態でも好走する場面もありましたので、初優勝のチャンスもあるかもしれません。
昨シーズン中にアヴィンティアからチーム名が変更になったサテライトのエスポンソラマはmoto2クラスから昇格した2名のイタリア人ライダーを起用します。バスティアニーニは昨年のmoto2クラスのチャンピオンですが、motoGPクラスのマシンにどれだけ順応できるかは注目です。またロッシの異父兄弟のマリーニは満を持してのmotoGP昇格です。昨年はバスティアニーニと同じ3勝を挙げていますので、いきなり上位を走る可能性もあります。また兄ロッシとの兄弟バトルも注目です。
KTM
種別 | チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|---|
ファクトリー | RED BULL KTM | 88 | ミゲール・オリベイラ | ポルトガル |
33 | ブラッド・ビンダー | 南アフリカ | ||
サテライト | RED BULL KTM TECH3 | 9 | ダニーロ・ぺルトッチ | イタリア |
27 | イケル・レクオーナ | スペイン |
KTMは昨年はメーカとして3勝を挙げた事で、新規参入メーカに与えられるコンセッション(優遇措置)がなくなり、シーズン中のエンジン開発、エンジン使用基数が、他メーカと同一条件での戦いとなります。そのため真価を問われるシーズンになります。直前に行われたカタールでのテスト走行のタイムも芳しくなく、試練のシーズンになるかもしれません。
アプリリア
チーム名 | 車番 | ライダー | 国籍 |
---|---|---|---|
APRILIA RACING TEAM GRESINI | 41 | アレイシ・エスパルガロ | スペイン |
32 | ロレンソ・サルバドーリ | イタリア |
唯一完全なファクトリーチームではなく、グレシーニ・レーシングにアプリリアがマシン提供するという形で参戦します。エースであったアンドレア・イアンノーネがドーピング問題で出場停止となったことで空いたシートはテストライダーであった、ロレンソ・サルバドーリが昇格することで決着したようです。一時期はドカティとの契約がなくなったドヴィツィオーゾの起用も噂されていましたが、ライダーに関しては大きくチーム体制を変えない事で決着したようです。
20105年の参戦以来、いまだに表彰台獲得はなくマシン開発の進展がどの程度進むかが注目です。motoGP 参戦メーカの中で、唯一コンセッションを受け、シーズン中もマシン開発が可能なのでシーズン後半に飛躍する可能性もあります。昨年末に新型コロナウィルス(COVID-19)で亡くなった、チームオーナーのファウスト・グレシーニに捧げる飛躍を見せられるかが注目です。
moto2/moto3の日本人選手
中量級のmoto2 クラスでは昨年のカタールGPの覇者の長島哲太は残念ながらシートを失い今シーズンは参戦できません。変わって昨シーズンmoto3 クラスでランキング3位を獲得した小椋藍が昇格しましたので、引き続きmoto2 クラスで日本人ライダーの活躍を見る事ができます。moto2 クラスはすべてのチームが同じエンジンを使用しますので、マシンに大きな差はありません。moto2 ルーキーの小椋がどこまで上位に食い込めるかが注目です。
一方で軽量級のmoto3 クラスでは、鈴木竜生、鳥羽海渡、國井勇輝、山中琉聖之4選手が参戦します。4人の中では、昨年のアンダルシアGPの覇者、鈴木竜生に注目です。昨シーズンの後半は故障の影響もあり不本意ものとなりましたが、昨年のランキング1位から5位までのライダーはmoto2 クラスに昇格したので鈴木選手にも充分チャンスはあるでしょうl。
また昨シーズンの最終戦で勝利した鳥羽海渡にも注目です。今年はチームを移籍したものの引き続きKTMのマシンでの参戦となります。