今回は久しぶりに食べ物ネタである。場所は蒲田である。
蒲田駅の東口を出て大森方面へ少し行ったところに、石川家食堂という店がある。基本的には中華料理店なのであるが、店先には焼魚定食やらジャンルを問わないメニューの張り紙がしてある。小生は基本的にメニューの多い店と言うのはあまり感心しない。ラーメン屋なのにカレーやカツ丼を出したりする店と言うのは、経験上あまり美味しくない店がほとんどだからだ。時にはまずいだけではなく、冷凍食品をチンなんてこともある。仕込みの手間を考えれば小さな店で、そんな多くのメニューをそろえると言うのは難しいはずである。
今回の石川家食堂はそんな、メニューの多い中華料理店であった。店を入るとかなりお歳を召していると思われる女性(90歳超?)が甲高い声で迎えてくれた。メニューには数多くが記載され、中にはきちんと(?)カレーライスの文字も記載されており、正直言って最初に入った時は、「失敗した」という印象であった。そう思ったものの一度入った店を何も注文せずに出るという度胸も持ち合わせていない小生は、店内の張り紙で「名物」と記載されていた、牛すじ丼を頼むことにした。中華料理点なのに牛すじ丼である。メニューの性格上、盛り付けをすればよいだけであるので、頼んだものは、それほど時間をおかずに運ばれてきた。
黒い丼に入った牛すじ丼はご飯の上にレタスを敷き、その上に少し大きめの牛すじがごろんと乗っており、その上に紅しょうがが飾られている。小鉢と味噌汁がついてボリューム的にもかなりのものである。実際に食べてみると、やわらかく煮込まれた牛すじは濃すぎない丁度よい味付けとなっている。牛すじに残る脂分をご飯の上のレタスと紅しょうがが受け止め、油っぽさを解消してくれている。店に入った時は斜に構えていた小生であったが、自分の考えが間違っていたことに気づかされることとなった。牛丼を出す店は様々あるが、牛すじ丼というのも珍しい。メニューが多くてもうまい店はあるものだと考えながら、その日は店を後にした。
ところが後日になって何度か同じ店に行き、中華のメニューを頼んでみたのであるが総じてパンチのない凡庸な味であった。この店はやはり名物は牛すじ丼とあのお婆ちゃんなのかもしれない。