以前から書こうと思っていたのだが、なかなか時間がなくて書けなかったことがある。それがA380購入をめぐるスカイマークの問題である。小生は仕事の関係でディスクローズされている財務諸表を見る機会があるが、今回はそんな切り口から書いてみたいと思う。
まず購入契約の内容から見てみたいと思う。2011年にスカイマークとエアバスはA380を4機を購入する契約を締結し、プラスして2機のオプション契約を締結する。同年6月にはオプション権を行使して全6機を購入すると発表した。総額で1,900億円超の契約である。
これに対して同社の資本金は141億円余りである。2012年、2013年の同社の財務諸表を見ると、以下のような形となっている。
【総売上高】2012年:859億円、2013年:859億円
【総事業費】2012年:774億円、2013年:850億円
【販管費】 2012年: 38億円、2013年: 33億円
【営業利益】2012年: 46億円、2013年:▲25億円
売上高は横ばいなのに対し、事業を営むのにかかった費用が80億円余り増えた結果、赤字に転落している。資本金の10倍以上、2012年営業利益の40倍以上という設備投資計画である。2012年と同等の営業利益が毎年出たとして、その全額を支払い充て完済までに40年も要するという計算である。これは常軌を逸した計画だと言わざるを得ない。また資産内容を見ても以下のような状態である
【流動資産】 2012年:231億円、2013年: 70億円
【固定資産】 2012年: 24億円、2013年: 31億円
【建設仮勘定】2012年:172億円、2013年:264億円
2013年は赤字決算に伴い現預金等で構成される流動資産が大きく減少しているが、前年度でも会社の資産は400億円ほどしかない。その状態で1,900億円もの買い物をしようというのは明らかに無謀と言える。
しかしA380購入という決断に至った外的要因にも起因した部分もある。JALでもANAでも、多くの航空機をリースという形で調達している。しかしA380はリース会社からリース契約が断られたようである。その要因はA380の不人気ぶりである。現在の航空業界の主流は中型機できめ細かいネットワークを構築するというもので、B747が活躍していたころのように大型機材で一度に大量輸送するというものではない。
華々しくデビューしたA380であるがそんな事情もあり引き渡し数は伸びていない。現段階で遅れてデビューしたB787が、147機を引き渡しているのに対し、A380は121機にとどまっている。そのため他への転貸が難しいA380のリース契約をリース会社が渋り、スカイマークがA380を導入するには自社で購入する以外に方法がなくなり、購入決断を決意したようだ。しかしこの経営判断は上記の財務諸表を見ても明らかに誤りである。
今回の問題でエアバス側は700億円の違約金を求めているが、これをスカイマークが払えるかも疑問である。公開企業が資金調達をするには銀行等からの融資や増資が考えらるが、資本金140億円の企業が700億円も増資することは無理がある。銀行も資産内容を見れば700億もの融資はできないであろう。
スカイマークはエアバスに対して、購入金額の前払いとして260億円を払っているがこれは返却されない公算が高い。この分は損金計上されることになると思われるが、それにより同社の今期決算は赤字決算となることは確実だ。経営判断の誤りに余栄、身売りも現実味を帯びそうな状況のようである。
最初にSKYがA380を発注した時には、マニア目で見れば、ついに日本でもA380に乗れると喜ぶ半面、
本当にこんなに購入して払えるの?
という疑問もありました。
1機とか2機なら疑問を持たなかったと思いますが、こんなに大量買いとなると・・・。
無謀ですよね。
もし、購入してから払いきれなくなったらどうするつもりだったのでしょうね。
私はちょっとうがった見方ですが、エアバス社は決して納品される事が無いだろうと言うのを判っていて受注を受けたのだと思ってます。
日本以上にシビアな与信基準を設定しているであろう欧米の大企業の経理担当が、スカイマーク社の財務状況など把握していなかったとはとても思えません。
となると目的は違約金狙いかと。
本来、着手金は部材の先行調達などに充てられるはずですが、多分エアバス社は収まるはずの無い機材の部材は調達していないと思います。
なので、少なくとも今は預かり金?となっている前払いの着手金は丸々儲けになる筈です。
逆にいえば、スカイマークが「おぉ、発注した分全部買ってやるから、納期通り納めろや!」と言っても多分納期は順守出来なかった筈です(笑)
スカイマーク社がA380を導入と聞いたときは
安い運賃で380に乗れるかも・・と喜んだのですが
壁は厚そうですね。
餌釣師さんのおっしゃる通り、最初か違約金狙い
だったのかもしれません。
私は最初から
買えないと思ってました
と書けばなんかすごく訳知り顔の嫌な奴と言う感じがしますが
そもそも路線も満足にない会社に
巨機をあてはめる基盤は到底最初からないと言う
小学生並みの発想でそう思ってました(笑)
そこまで言い切って良いのかという問題もなく
餌さんのお考えは100%ととは解りませんが正しいと思います
最初からキャンセル見込みがあったと思います
しかし今の銀行
違約金のための融資ってするのでしょうか
HISが株主として残っていれば別ですが・・・
Dr.鉄路迷さん
マニア目線では確かについににひょんの航空会社でA380を見ることが
できるんだと思いましたよね。そういう意味では残念なニュースと。
どういう見通しで購入計画をたてたのか本当に謎です
餌釣師さん
購入計画の発表時は私は詳しく見ていなかったのですが、当然リースで調達
するものだと思い込んでいました。ですので今回のキャンセル報道が
あったときはリースではなく購入だったということに本当に驚きました。
確かに与信に厳しい欧州の会社が私程度でもわかる財務状態をきっちりと
チェックしていないはずがありませんよね。そうなるとおっしゃるように
違約金狙いというのもあながちうがった見方ではないかもしれませんね
いはちさん
これで国内の航空会社でA380に乗るということは可能性がゼロに
なってしまいました。JAL/ANAの状況を見てもA380を導入するような
状態ではないのでムリでしょうね
あさとさん
エアバスがどのくらい強硬に違約金の支払いを求めているのかは
不明ですが、もし違約金を払わなければならなくなったとしても
銀行は相当困難な条件を飲まない限り簡単には融資しないでしょうね。
前払い金の金額だけでも 2012年度利益の5倍もの金額です。
それが帰ってこないだけでも同社にとっては相当の痛手ですね