イサーンの葬式 -タイ・ソンクラーン録 Vol.25-

小生がイサーンの村に来る数日前に、隣村で不幸があった。日本とは大乗仏教と上部座位仏教の差はあるものの、同じ仏教なので人がなくなったら僧侶を呼び葬儀を行い火葬するというのは日本と共通である。

しかし日本とは異なる点も沢山ある。まずイサーンでは葬儀が1日では終わらない事だ。葬儀に何日かけるかと言う事は、その家の経済状況や社会的地位によって変わるが、3日から1週間ほどというケースが多いようだ。そのため亡骸は暑いイサーンの気候で傷まないようにクーラー付きの棺に納められる。その間の弔問客や僧侶への食事の提供などは地域の女たちが総出で行う事になる。そうした長い葬儀が終わると、亡骸は火葬され墓に埋葬するか散骨される事となる。

小生がイサーンの村に到着したのは、そんなイサーンの葬式の3日目で翌日には荼毘に付されると言う日であった。故人と面識がなくても弔問するのは問題ないという事で、小生も葬儀を行っている家を訪問する事にした。しかしそこには男たちが縁台で酒を酌み交わし楽しそうに話している光景があった。湿っぽさと言ったものは一切なく、家の中に祭壇がなければ近所の人が集まって一緒に飲んでいるようにしか見えないのだ。

そんな様子は日本のしめやかな葬儀とは明らかに異質であった。話を聞くと生前にそれなりにタンブンをして徳を積んでいれば、来世で幸せに暮らせるのだし、あまり悲しんでいると死者が足を引っ張られて旅立ちができなくなるという考えらしい。

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しかし最大の違いはその翌日の夜に待っていた。故人を荼毘に付し埋葬するといった、仏教的な行事を一通り終えた後に、葬儀を行った家主催でなんと大パーティーが開催されるのだ。村はずれの大きな空き地には、仮設のステージを組んでバンドや歌手、ダンサーを呼び、歌を歌わせ踊らせる。もちろん歌は湿っぽいものではなく、アップテンポのもので、ダンサーは露出の多い衣装を着て妖艶なダンスをする。たいていの人はそれを座って酒を飲みながら見ているが、なかには歌に合わせて踊りだす人まで現れる。小生だったら旅立つどころか逆にゆっくり眺めていたいと思ってしまいそうだが、葬儀を行った家がこうした催しを行うのもタンブン(施し)のひとつと言う事らしい。
たまたまそのようなタイミングでの訪問となったため、小生もその様子を見る事ができたが、日本人的感覚との違いには驚かされるばかりであった。聞くところによれば大きなセットとともに大人数の楽団を呼ぶのでやはり相当なお金がかかるそうである。そのため必ずしも葬儀とセットでこうした催しが行われない場合も多く、日を改めて行うケースも多いそうである。

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こちらは歌手のお二人

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ダンサーたちは露出の多い衣装で踊ります。

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村のオカマちゃんたちもノリノリで踊っています。
薄暗い中踊るのでコンデジのAFが追いつきません。

ステージの様子を少し動画で撮影。
撮影条件が良くないのであまり鮮明ではありませんが・・・

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タイには墓がないとも言われていますが、イサーンの寺には
どこに行っても墓があります。


8 responses on イサーンの葬式 -タイ・ソンクラーン録 Vol.25-

  1. いはち より:

    これだけの葬式をあげるられるのは、かなりの
    お金持ちなのでしょうね。
    荼毘に付される前からも村の人が酒を飲んで
    談笑しているのであれば、大往生だったのかもしれませんね。
    荼毘に付された後も派手にお見送りをして・・
    さぞかし故人は喜んでいる事でしょう。

  2. 餌釣師 より:

    こちらではお墓があるんですね。
    お墓の形が仏舎利塔のような形ですが、その認識で合ってるのかな?
    お墓は日本のように家族ごとなんでしょうか?
    ところでMKさんも踊ったんですか?

  3. あさと より:

    「死」と言うものに対しての意識が
    我々とは違うことは間違いないでしょうね
    日本同様輪廻転生の・・・と言われることが多いですが
    全く程度が違うことは向うの人と話をするだけでわかりますよね
    日本の葬儀全般でも
    初七日のあと
    死者が現世での所業を改め
    来世でうまく行くように
    お坊さんがその所業に適した7人の観音さんを一人づつ呼んで
    知恵を授けてもらうためのお経を1週間に1回上げます(中院)
    1週間で一人の観音さんなので49日
    それがすんで初めて満中院として
    向こう岸に行くそうです
    そういうのと
    元が一緒のシステム?なのかもしれませんね

  4. ま~く より:

    いはちさん
    日本の葬式とは全く違って湿っぽさと言うものは皆無でした。
    やはり財力がなければこのようなイベントを開く事はできません
    ので、今回の家は裕福な家なのでしょう。

  5. ま~く より:

    餌釣師さん
    おっしゃられているものがお墓になります
    今回は私もある方のお墓参りをさせていただきました。
    お墓を建てる単位も日本と同じようです。
    ただ日本のお墓なら「XX家之墓」と刻まれていますが、何も書いていない
    お墓もあるので、おじいちゃんのお墓はこれだっけ?
    なんて事も起きるようです。
    > ところでMKさんも踊ったんですか?
    私は後学のために見学に徹しました。

  6. ま~く より:

    あさとさん
    おっしゃるように、「死」と言うものに対する考え方が日本人と
    タイ人ではかなり違いがあると感じました。
    大乗仏教と上座部仏教の違いはあるものの、同じ仏教ですので
    そのなかで語られる輪廻転生の考え方と言うものは共通していますね。
    ただ仏教は各地に伝播する際に、ローカライズされて広まって
    行きましたので葬儀の方法や儀式の内容が異なるのは興味深い
    所だと思います

  7. Akiko より:

    タイのお葬式は長い、という話は聞いたことがあったのですが、まさかコンサートまでやるとは!驚きです(^^;。でも、もし自分が死んでお葬式をするとなったら、家族友人にひたすら泣かれるより、こういう風に楽しく過ごしてくれる方が良いかも、とちょっと思いました。
    死に対するタイの人たちの考え方は、とても興味深いですね。でも、人の死に関してだけじゃなく、タイの人たちって全般的に、過去に固執しない傾向があるような気がします。

  8. ま~く より:

    Akikoさん
    タイ全土で葬式の後に、こうしたイベントがあるのかイサーンだけなのかは
    私もわかりません。なにせサンプルがイサーンだけですので。。
    私もじめじめした葬式よりはこういった明るいものが良いですね。
    ちなみに私の父親は、俺が死んだら芸者を呼べなどと言っていましたが
    実現はしませんでした(笑)
    同じ仏教を信仰する国でありながら、死生観のちがいは面白いですね。
    過ぎ去ったことは取り返すことはできないので、マイペンライとして
    気にしないと言うはタイ人らしい気もします


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