AppleとQualcommの和解

アメリカ半導体大手のQualcomm社と、Apple社は特許料の支払いや特許侵害などを巡って訴訟合戦を繰り返してきましたが、このたびようやく決着することで合意したようです。

訴訟の経緯

これまで両社は2年余りにわたって以下のような訴訟を繰り返していました。

年月 出来事
2017年1月 Appleが特許料を課題に請求しているとして、Qualcommを提訴
自社のサプライヤーに特許料を支払はないよう指示
2017年4月 Qualcommが適正な特許料の支払いがないとして、Appleを提訴
2017年10月 Qualcommが中国でiPhoneの製造・販売停止を求め、Appleを提訴
2017年11月 Qualcommが、Intelに機密情報を横流したとして、Appleを提訴
Appleがスマートフォン向け半導体の特許侵害があるとして、Qualcommを提訴
Qualcommが、iPhoneXの画像処理技術に特許侵害があるとして、Appleを提訴

Qualcommはガラケーの時代から携帯電話の通信機能をつかさどるモデムチップを手掛ける、同分野では最大の半導体メーカです。かつてはAppleもすべてのスマートフォンで、Qualcomm製のモデムチップを採用していました。ところが2017年に特許料の支払いを巡ってAppleが、Qualcommを提訴したことで両者の関係は急速に冷え込むこととなりました。

iPhoneで使用するモデムチップ

スマートフォンの部品に関しては複数のサプライヤーから調達することを是としているAppleですが、前述の通りモデムチップに関してはQualcommのみからの供給となっていました。これはモデムチップに関してはQualcommの事実上の独占分野で他にサプライヤーがなかった状況に起因します。

しかしQualcommとの関係悪化を受け、Appleは他のサプライヤーを探すことを迫られます。そうしてAppleにモデムチップを供給することになったのが、パソコン向け半導体最大手のIntelでした。そうしてiPhone7シリーズでは、Qualcommに加えてIntelからも調達を開始します。

パソコン向け半導体では充分な実績のあるIntelもモデムチップに関しては、当時は実績が乏しい状態でした。そのためQualcomm製のモデムチップとIntel製のモデムチップでは明らかな性の差があったようです。これに対しAppleはQualcomm製のモデムチップの性能を抑制しIntel製のモデムチップに合わせる措置をとったことも大きな話題となりました。

その後に発売された、iPhneX、iPhne8シリーズではすべてのモデムチップがIntel製のものが採用され、Qualcommは排除された形になっていました。AppleとしてはQualcommなしでも、自社の製品ロードマップに影響がない状況を作り出したはずでした

状況の変化

Appleが作り出した脱Qualcomm体制ですが、それを継続できない事態が発生します。それが次世代通信方式の5G通信対応を巡るIntelの遅れです。

次世代通信方式の5Gでは10Gbpsでの通信が可能とされ、2時間映画のダウンロードが3秒ほどで完了するといわれています。韓国など一部の国ではすでに地域を限定してサービスを開始している国もあります。Appleでは5Gに対応した自社製品のリリースを2020年と計画していました。Intelがこれに間に合わせるためには今年(2019年)夏にはサンプルをAppleに提供し、2020年初頭には設計を終える必要があります。しかしIntel側の作業の遅れにより、これが間に合わない可能性が高くなってきたのです。

またIntelとしてもAppleへのモデムチップ提供で得られる利幅は小さいといわれています。そのため最近CFOからCEOに就任したロバート・スワンは利幅の高い、サーバやパソコン向け半導体の対応を厚くするべきと主張していたようです。

モデムチップの内製化

こうした状況の変化を受け、Appleはモデムチップの内製化を図っているようです。すでに数千人規模でQualcommやIntelから引き抜いたエンジニアが、モデムチップの開発に着手しているようです。しかしそれほど簡単に開発ができるはずもなく、内製化したモデムチップが製品に搭載できるようになるのは早くても2021年と言われています。

Qualcommとの和解

Intelも自社でも5G対応のモデムチップの供給ができないとなると、ほかに供給先を探す必要がありますが、その供給能力があるサプライヤーはQualcomm を除いてありません。そのためには支障となっている訴訟合戦を終わらせる必要があります。今回のQualcommとの和解は、八方塞りに陥ったApple の苦汁の選択と言えるのかもしれません。

一方でIntelは今回の合意発表に合わせるかのように5Gモデムチップからの撤退を発表しています。IntelとすればAppleに頼み込まれてモデムチップを作っていた面があるので、今後はPC向けのCPUの納入に絞った取引になるものと思われます。

ただ今回の合意で完全に解決とはいかないのかもしれません。再びQualcommとの関係が悪化しないとも限りませんので、Appleは自社でのモデムチップ開発を続けるでしょう。5G対応の初号機はQualcommチップで凌ぐものの自社製のチップが完成すれば以降は自社製のものに切り替えていくかもしれません。

2 responses on AppleとQualcommの和解

  1. あさと より:

    経営としては当然のことなのでしょうからね
    ただそれまでの過程で
    自分達は何をしたのかと言うことを
    最近よく考えてしまいます
    その時の状況によって
    とらざるを得ない最良策であろう事象は
    ゆくゆくは自刃になるかもしれない
    今の社会ではそういう見方をすることはないですからね
    歳をとるにつれ
    まっとうな……と言うことが
    すごく気になり始めています

    1. ま~く より:

      あさと さん

      世界的にみるとApple社のスマホは高いですから、最新機能を搭載して高級感を出していかなければ売れなくなりますから5G対応は死活問題でしょう。そのために金で解決できることは金で解決しようという手段に出たものと思われます。


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